新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、外食産業や旅館業を中心に大きな打撃を受けた事業者が数多く存在します。事業が続けられなくなる前に事業転換して、存続を図ろうとするのは想像に難くありません。そのような事業者に対して支援する制度が事業再構築補助金です。
今回は事業再構築補助金の概要や必要書類、申請方法等についてまとめました。最大1億円が受け取れる事業再構築補助金制度を正しく理解し、ぜひご活用ください。
CONTENTS
事業再構築補助金とは、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために思い切った事業再構築をする中小企業等の挑戦を支援する制度です。(最大補助額は1社あたり1億円。)
令和2年度補正予算は1兆1,485億円という大型補助金です(令和3年度補正予算案額は6,123億円)。
事業者の状況や取組予定の事業別に5つの枠が設定されています。
事業再構築に取り組む事業者に対する支援枠
最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい事業者に対する支援枠
多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金引上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる事業者に対する支援枠
事業の状況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者に対する支援枠
グリーン分野における事業再構築を通して成長を目指す事業者を対象とする支援枠
事業再構築補助金は補助対象となる範囲が広く、補助金額も高額な魅力的な制度です。下記のようなイメージで補助金を活用し、経済社会の劇的な変化に対応しましょう。
コーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施
店舗型からネット販売やサブスクリプション形式に転換
ロボット関連部品等の新規事業を立ち上げ
ガソリン車向けの部品に加え、昨今市場が拡大している電気自動車向け部品の製造に新たに参入(グリーン成長枠を想定)
日本国内に本社を有する中小企業者等及び中堅企業等に限られます。
事業再構築補助金の対象者である中小企業者は以下のように定義づけされています。
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
---|---|
製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
2021年12月現在において、中堅企業者の範囲は定められていません。しかし一般的には資本金1億円以上10億円未満の事業者が中堅企業者とされていますので、この範囲内であれば対象者とあたると考えられます。
自社が中堅企業者にあたるかどうか判断がつかない場合は、事業再構築補助金の事務局に問い合わせるのが最も確実です。
補助額と補助率は、申請類型や従業員規模等により定められています。どの程度の補助を受けられるのか、下記の表で確認してください。
申請類型 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 従業員規模により2,000万円、4,000万円、6,000万円、8,000万円 | 中小企業2/3、中堅企業1/2 |
最低賃金枠 | 従業員規模により500万円、1,000万円、1,500万円 | 中小企業3/4、中堅企業2/3 |
大規模賃金引上枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数101人以上】8,000万円超~1億円 | 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)、中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
回復・再生応援枠 | 従業員規模により500万円、1,000万円、1,500万円 | 中小企業3/4、中堅企業2/3 |
グリーン成長枠 | 中小企業1億円、中堅企業1.5億円 | 中小企業1/2、中堅企業1/3 |
事業再構築補助金の対象となる経費は以下のとおりです。
ただし一部の経費については上限等の制限がありますまた対象経費として認められるためには、証拠書類によって必要性及び金額の妥当性を明示する必要があります。
事業再構築補助金の対象者であっても、申請要件を満たしていなければ補助金申請はできません。申請のために必要な要件は以下の2点です。
2020 年 4 月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高 が、コロナ以前(2019 年又は 2020 年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 10%以上減少していること
または
2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロ ナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること
(※付加価値額=営業利益 + 人件費 + 減価償却費)
なお、グリーン成長枠に関しては売上減少に関わる要件は課されません。
事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営革新等支援機関と共に策定することが必要です。補助額3,000万円超は金融機関の参加も必須となります。
なお金融機関が認定経営革新等支援機関の場合は、金融機関のみで構いません。
2022年3月28日から、第6回公募が開始されました。公募期間は6月30日(木)18時までです。申請の受付開始は5月下旬~6月上旬を予定しているとのことです。
事業再構築補助金の申請方法と補助金を受け取るまでの流れをご説明します。
GビズIDとは、さまざまな行政サービスにログインできるサービスのことです。事業再構築補助金申請は電子申請のみですので、GビズIDプライムアカウントの取得が必須です。アカウントの取得には1週間以上かかりますので、まず最初にGビズIDプライムアカウントの取得作業を行いましょう。
なおGビズIDプライムアカウントは、一度取得すれば有効期限もなく半永久的に使い続けられます。
1.スマートフォンもしくは携帯電話
ワンタイムパスワードをSMSで受信するために必要です。
2.印鑑(登録)証明書と登録印
申請書に押印の後、印鑑(登録)証明書と共に送付します。発行日より3カ月以内の原本であることが必須です。
作成した申請書と印鑑(登録)証明書の原本を封筒に入れて下記まで送付してください。
【送付先】
〒530-8532 GビズID運用センター宛
郵便番号と宛名だけで届きます。
記載内容に誤りがあった場合や手書き修正された書類は受け付け不可となり再申請となります。郵送前に漏れや間違いがないかチェックしてください。
補助金の審査は事業計画書をベースに行われるため、合理的で説得力のある事業計画を作成しましょう。事業計画書は認定支援機関と共に作成します。
大まかな記載内容は以下のとおりです。
最大15枚にまとめてください。(補助金額1,500万円以下の場合は最大10枚)
選択した事業再構築の類型の「事業再構築指針」に定める該当要件を満たすことを示します。
該当要件は「商品やサービスに新規性があるか」「市場の新規性があるか」「売上はどの程度見込めるか」等です。具体的な数値を用いて客観性のある資料に仕上げましょう。
想定している市場や期待される効果について記載します。ユーザーや市場規模、事業化の目標時期や売上規模、価格等について、図表や写真を用いながら具体的かつ簡潔に示すことが求められます。
補助事業により取得予定の主な資産を記載します。
直近の決算年度から補助事業開始を経て5年後までの収益計画を記載します。
事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上の増加を見込む計画でなければ採択されません。売上高や利益の見込み額を根拠立てて記入してください。
せっかく申請作業を行なっても不備があれば苦労は水泡に帰します。申請を完了させる前に、添付資料がすべて揃っているか、記載内容に空欄や誤りがないかチェックしましょう。
採択の決定後、採択・不採択の結果を事務局から通知されます。採択となった案件については、事業再構築補助金の公式サイトで公表されます。
補助金の交付申請手続きを行います。相見積りの中で最低価格を選定してください。計上された経費が補助対象外と判断されると、交付決定額が減額となる場合があります。審査通過前に補助事業を開始した場合は、原則として補助金の交付対象とはなりません。
審査通過前であっても、事前着手申請を行い承認された場合には経費として認められます。ただし不備等により事前着手申請が承認されなかった場合は補助対象外となります。そのため早めに交付審査申請を行う方が確実です。なお事前着手申請は専用サイトから行えます。
補助事業を実施する期間で、交付決定日~12ヶ月または14ヶ月以内です。補助金対象経費を使い、必要物資等を発注しましょう。支払いは必ず銀行振込を利用してください。手形払等で実績を確認できないものは補助対象外となります。補助事業が終了したら実績報告を行います。
実績報告から確定検査が行われます。事業者が適切に補助金を支出したことを確認した後、補助金の交付額が確定します。補助対象物件や帳簿類での確認ができない場合、その経費は補助対象とはなりません。
交付額を確認したら専用サイト上で補助金申請を行いましょう。指定した金融機関に補助金が振り込まれます。
補助期間終了後5年間は毎年実績報告を提出します。
事業再構築補助金の申請時に添付する書類をまとめました。添付書類を揃えるだけでも時間がかかりますので、早めに準備に取り掛かりましょう。
注意すべき点は大きく2点です。「事業計画書の作成」と「アカウント取得までのタイムロス」を念頭に申請作業を行なってください。
事業計画書の作成には、認定支援機関による確認が最低限必要です。認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関のことです。
L&Bヨシダ税理士法人も認定支援機関にあたります。事業計画書作成の相談にも対応していますので、自社内だけでの作成が難しい場合は早めに相談してください。
事業再構築補助金の申請は電子申請のみとされており、電子申請を行うために必ずGビズIDプライムアカウントを取得しなければなりません。しかしアカウント作成には書類を郵送してから数週間かかることもあり、予想以上に待ち時間がとられてしまうことも。
アカウントの申請を早めに行い、認定支援機関への相談や事業計画書の作成を並行して進めましょう。
新型コロナウイルス感染症拡大で打撃を受けた事業者に対して支援してくれるのが事業再構築補助金制度です。事業計画書をしっかりと練り、採択を勝ち取りましょう。
事業計画書作成のポイントは、想定するニーズや見込み額の根拠を明示し、説得力のある書類に仕上げることです。より良い書類に仕上げるためにも認定支援機関と共に二人三脚で作成していきましょう。認定支援機関は専門家として第三者目線でブラッシュアップし、採択の可能性を高めてくれます。
まずは、お気軽にご相談ください