経営改革や生産ライン増強等に利用できるものづくり補助金に「グリーン枠」が新設されました。
グリーン枠は温室効果ガスの排出削減等に取り組む事業者を支援する制度です。
補助上限額が高く設定されていることから、脱炭素化に関する取り組みをお考えでしたら、グリーン枠での申請をおすすめします。
今回はものづくり補助金のグリーン枠について、通常枠との違いや補助上限額、追加要件等を詳しく解説いたします。
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グリーン枠とは、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発や炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善等を行う事業者を対象にした新たな申請類型の1つです。
補助上限額は最大2,000万円、補助率は2/3以内と、通常枠より補助上限額も補助率も高いことが大きな魅力。
温室効果ガス排出削減の取り組みや改善を実施することが追加要件となりますが、申請する補助事業が追加要件に該当する場合は、通常枠ではなくグリーン枠での申請をおすすめします。
中小企業庁による活用事例によると、以下のような場合が該当するとのことです。
製造業の場合、脱炭素化に寄与する設備・システムを導入するとともに、電気自動車向け部品を製造するための機械装置を導入することで、生産工程の脱炭素化と付加価値向上の両立を目指す。
補助対象経費の例 |
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ソーラーパネル等を導入して売電を行う事業や、既存設備の更新・改修は、補助対象となりませんのでご注意ください。
基本要件に加えて、以下全ての要件に該当することが求められます。
①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発であること
又は ②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善であること |
3〜5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること |
これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取組の有無(有る場合はその具体的な取組内容)を示すこと |
炭素生産性=付加価値額/エネルギー起源二酸化炭素排出量
「エネルギー起源二酸化炭素排出量」とは、燃料の燃焼で発生・排出される二酸化炭素量を指します。炭素生産性を増加させるためには、エネルギー起源二酸化炭素排出量を小さくしなければなりません。
具体的には燃費効率の良い設備に刷新したり、製造工程を見直したりする必要があります。
なお、ものづくり補助金の基本要件は、以下のとおりです。
以下の要件をすべて満たす3〜5年の事業計画を策定していること。
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グリーン枠は従業員規模により補助上限額が変動します。
御社の企業規模では最大いくらになるか、下記でお確かめください。
<グリーン枠>
従業員規模 | 補助上限額 | 補助率 |
5人以下 | 1,000万円以内 | 2/3以内 |
6〜20人 | 1,500万円以内 | 2/3以内 |
21人以上 | 2,000万円以内 | 2/3以内 |
ちなみに通常枠は以下のとおりです。
グリーン枠がいかに優遇されているかが分かります。
<通常枠>
従業員規模 | 補助上限額 |
5人以下 | 750万円以内 |
6〜20人 | 1,000万円以内 |
21人以上 | 1,250万円以内 |
通常枠と同様に、日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する中小企業や個人事業主等が該当します。
11次締め切り分より資本金10億円未満の特定事業者も、対象者に加えられることとなりました。
以下に対象者の一例を掲載します。
<中小企業>
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業、旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
<特定事業者の一部(資本金10億円未満)>
業種 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 500人 |
卸売業 | 400人 |
サービス業又は小売業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 300人 |
その他の業種(上記以外) | 500人 |
補助対象経費は通常枠と変わりません。
単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要なことも同じです。
経費項目によっては、補助対象となる上限割合が定められていますのでご注意ください。
また「補助対象経費とならない範囲」もかなり細かく明示されています。
たとえば不動産の購入費用や車検費用、各種保険料等は補助対象となりません。
少しでも「これは補助対象になるのかな?」と疑問に感じたら、公募要領で確認するか専門家にご相談ください。
通常枠であれば「技術面」「事業化面」「政策面」が審査項目の全てですが、グリーン枠はさらに「炭素生産性向上の取組等の妥当性」が審査されます。
追加要件である脱炭素化が実現可能かどうかが見られる項目です。
なおこの審査のために「炭素生産性向上計画及び温室効果ガス排出削減の取組状況【様式2】」という書類を作成・添付することとされています。
炭素生産性を年率平均1%以上増加させる具体的な計画内容と、これまでに自社で実施した温室効果ガス排出削減の取組内容の有無やその効果等を、詳細に書き記しましょう。
グリーン枠で不採択となった場合、通常枠で再審査されることはありません。
別の枠も同様で、不採択となった事業が通常枠に回されて審査されることはありません。
ですから通常枠での採択を目指す場合は、申請時に通常枠を選択しておく必要があります。
グリーン枠での審査通過が困難なら、早い段階で通常枠に切り替えるべきでしょう。
なお応募締め切り前10ヶ月以内に、ものづくり補助金の交付決定を受けた事業者は補助対象者から外されます。
しかし過去に不採択となった事業者は何度でも挑戦できますので、諦めず次のチャンスを生かしましょう。
通常枠やその他の枠でも同様ですが、補助金を利用して導入した設備を許可なく処分したり、譲渡したりすることはできません。
廃棄等を行う場合は、事前に承認を得る必要があります。他の事業に転用する場合も同様です。
万が一設備を処分した場合には、かかった補助金額の返納義務が生じます。
ものづくり補助金のグリーン枠は、温室効果ガス排出削減に積極的に取り組む企業を支援する特別枠です。通常枠よりも補助上限額や補助率が高く、大規模な改革に向いています。
追加要件は少しハードルが高いかもしれませんが、クリアできれば魅力的な補助金が受け取れるチャンスです。
ぜひ積極的にグリーン枠を活用して、御社の改革・改善を促進してください。
まずは、お気軽にご相談ください